離婚原因として最も多いものが恐らくこの性格の不一致ではないでしょうか。夫婦として長い時間を過ごすなかで価値観の相違が段々無視できなくなっていき、家庭内の雰囲気が悪くなり、あるとき我慢の限界に達して離婚に至るという流れが最もよくある離婚の経過です。
しかし、性格の不一致というものは民法上の離婚原因として明記されていない(離婚原因とは) こともあり、弁護士に依頼したときや調停・訴訟でどのように扱われるのかよく分からないという方も多くいらっしゃいます。この記事では性格の不一致という離婚原因の扱いや主張の仕方などをご説明いたします。
離婚原因として民法に記載がないということは、相手が徹底的に離婚を拒否した場合、性格の不一致のみで訴訟によって強制的に離婚を実現することは容易ではないということを意味します。不可能というわけではありませんが、一工夫必要になります。
しかし、実際にこの問題に直面することはあまり多くありません。統計的に、離婚訴訟によって離婚する夫婦は全体の1パーセント程度です(どうやって離婚する?~協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いとおすすめ~ )。協議離婚や調停離婚の際にはお互いが離婚に同意さえしていれば原因は問われません。そのため、ほとんどの場合で、離婚の原因が性格の不一致のみであることは問題になりません。
私の経験としても、協議や調停の際に離婚を希望する理由を「性格の不一致です」と説明して全く問題なく離婚条件の話に進む方が多いです。一方が弁護士に依頼したり、調停を起こすほどの性格の不一致を感じているのであれば、多かれ少なかれ相手も同じように感じていることが多いのかもしれません。
全体に占める割合は少ないとしても、訴訟に移行してしまった場合のことも考えなければいけません。性格の不一致は民法上離婚原因として明記されていないため、抽象的な離婚原因を定めた「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると主張する必要があります。また、性格の不一致自体は夫婦がお互い人間であることからある程度は当然に生じるものであるため、その程度が重大なものであることを裁判官に示す必要があります。
しかしながら、性格の不一致は証明することが困難です。①自分の性格、②相手の性格、③性格が合わないこと、④その不一致が婚姻関係を継続できないほど重大なものであることを証明することは多くの場合難しいと言わざるを得ません。
そのため、性格の不一致自体ではなく、性格の不一致から生じる具体的な出来事を証明できないかを考えましょう。例えば、性格の不一致から別居に至り、その期間が長くなっていることは比較的証明が容易で、数年別居している夫婦が今更同居してやっていくことは難しいという判断になりがちです。そのほかには、Lineやメールでの事務連絡のみが重なる記録であったり、夫婦関係に悩んで心療内科に通院している記録も考えられます。
離婚に関するご相談を受けていると、「明確に離婚を決意するきっかけとなった出来事はない」というお話はよくいただきます。そのようなときも、多くの場合で問題にはなりません。また、訴訟せざるを得ないときもできることがあるかもしれません。まずはご相談ください。