「別居期間が〇年あれば離婚できる」という話を聞いたことがある方や、別居してしばらく経つが正式に離婚したいとお考えの方は多くいらっしゃいます。ここでは、別居期間の実務上の取り扱いや離婚を実現する上での活かし方についてご説明します。
裁判所や弁護士が離婚事件において、「別居」という言葉を使う際は、家庭内別居ではなく、夫婦が別の住所に居住していることを指します。また、単身赴任や里帰り出産のように一時的なものであり、将来的に解消することを前提とする別居も含まれません。「離婚に向けた別居」が必要と言われることもあります。少なくとも一方に解消する予定がない別居が必要です。
また、最初は一度距離を置いてお互いに頭を冷やすという趣旨であったとしても、途中でもう離婚したいと考えた場合のように途中から離婚に向けた別居に移行する場合もあります。
別居期間それ自体は民法上の離婚原因とはされていません。法改正によって5年間の別居期間を離婚事由として明記することも検討されましたが、結局実現しませんでした。そのため、長期間の別居を離婚原因とする場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として主張することになります。その他の事情も併せて離婚原因として主張し、総合的に考慮して離婚を認める判決を得ることを目標にすることになります。
「離婚のために必要な別居期間はどの程度ですか?」という質問はよくいただきます。上記の法改正の案で出ていた5年という期間はすべての夫婦に適用することを前提にしたものです。そのため、極端にいえば結婚して1年で別居した夫婦も30年同居してきた夫婦も5年の別居期間があれば離婚を認めようという法案です。
しかし、結婚して1年しか同居しなかった夫婦が1年別居しているのと10年同居してきた夫婦が1年別居しているのとでは一般論としては修復の可能性にもある程度差が生じると考えられます。少なくとも裁判所はそのように考える傾向があります。
過去の裁判例でも、同じ年数別居していても、別居期間のやり取りの有無・内容や、それまでの同居の期間などを考慮して判断が分かれています。しかしながら、少なくとも「別居期間が短い」という判断がされにくくなる目安としてはおおよそ3年程度というご説明をしています。離婚請求が認められない理由は様々ですが、1年や2年の別居期間では、「別居期間が1年に過ぎない」と判決文に明記されてしまうことがありますが、3年以上経過していると離婚請求を棄却する場合別の事情が認定されていることが徐々に多くなっていきます(同居の期間が長い・別居中もそれなりの交流があるなど)。
はっきりした離婚原因がない場合であっても、数年間別居して待つ必要はありません。離婚は相手が同意していれば別居していなくても可能ですし、別居期間は、離婚裁判の審理が終結した時点の期間を基準に判断します。離婚事件では、訴訟を提起する前に調停を経由しなければなりません。また、裁判には時間がかかるイメージがある方も多いと思いますが、実際それなりに時間がかかります。そのため、スムーズに進行しても離婚調停を申し立ててから訴訟の審理の終結まで1年以上は要します。そもそも訴訟をせざるを得ない時点でスムーズに進行することはまずないため、さらに時間を要することが多いでしょう。そのため、別居してすぐに調停を申し立てたとしても判決までには別居期間が2年近くになっていることも珍しくありません。また、夫婦間での話し合いでは相手が離婚を拒んでいても調停を申し立てたり、弁護士に依頼していると相手が離婚に同意することも少なくありません。
別居期間は、ある程度の期間があれば望ましいですが、現時点で別居からそれほど期間が過ぎていないとしてもできることはあります。別居期間以外に主張できる点はないか、判決までの期間の見込みなども検討する必要がありますので、一度ご相談ください