「慰謝料」という用語は、一言でいえば、精神的苦痛にに対して支払われる損害賠償です。金額は場面によりさまざまですが、何か物が壊れたときの修理費用や、けがをした場合の治療費のように数字がはっきりしているわけではない精神的苦痛に対して支払われるもの全般を指します。離婚の場面に限定されるわけではなく、刑事事件の示談の際や、交通事故の場面でも問題になります。
離婚に伴い発生する精神的苦痛に対して支払われる損害賠償です。離婚する場合、清々するという面はありますが、大なり小なり不愉快な思いはするでしょう。そのような離婚一般に伴う精神的苦痛ではなく、婚姻関係を破綻させられたことに対する精神的苦痛に対して支払われるのが離婚慰謝料になります。
細かく言えば離婚慰謝料には①離婚原因となった出来事(不貞や暴力など)に対する慰謝料と、②離婚それ自体から生じる精神的苦痛に対する慰謝料がありますが、実際にはあまり区別されません。
慰謝料は離婚する際に当然に請求できるわけではありません。相手が有責配偶者に該当することが必要です。有責配偶者とは、婚姻関係が破綻したことについて責任がある配偶者を指します。不貞行為や家庭内暴力が存在する場合、相手が有責配偶者に該当することになります。このような場合に慰謝料を請求することが可能になります。
また、慰謝料を請求するには、証拠も必要になります。不貞であれば探偵のレポートなど、家庭内暴力であれば病院の診断書などが考えられますが、いずれにしても相手が有責配偶者に該当することを証明する必要があります。証拠なしに慰謝料を請求しても相手が任意に支払ってくることはまずないでしょうし、裁判でも認められません。
単純に価値観の相違や性格の不一致を理由に離婚する場合は一方の当事者に責任があるわけではないので、慰謝料の請求はできません。これらの事情はお互い人間である以上ある意味仕方がないことであって、どちらかが悪いというものでもありません。
また、日本では宗教的なこだわりが強い方はそれほど多くないですが、信仰の相違のみを理由に離婚する場合も慰謝料の請求はできないと考えられています。憲法で認められた信仰の自由を理由に慰謝料の支払いを認めることはできないという考えです。ただし、信仰に基づき何らかの苦痛を伴う行為を強制したり、全財産を寄付して生活費を一円も払わないなどの具体的な行為があった場合はそれに対する慰謝料は考えられます。
また、配偶者の親族との不仲についても相手に慰謝料を請求することはできないと考えられています。相手と親族は別の人間であり、親族とのトラブルの責任を相手に慰謝料という形で負わせることはできません。
慰謝料を実際に請求するときは、多くの場合離婚の協議や調停・訴訟の際に、その他の条件と合わせて主張していくことになります。稀に離婚した後に別途訴訟などで慰謝料を請求する場合もありますが、時間が経過していて証拠が集まりにくかったり、慰謝料を請求する原因となった事実が離婚の原因にもなっていたのかが問題になったりと、一筋縄ではいかなくなることが多いです。
また、離婚してからも慰謝料云々の話を引きずりたくはない方がほとんどかと思います。そのため、離婚協議の中で一緒に解決することが望ましいといえます。
離婚の際には慰謝料のほかにも考えなければならないことがたくさんあります。まずは弁護士に相談してみましょう。