共同親権の導入について議論されていますが、少なくとも現在(2024年3月時点)では離婚する際には単独親権とされており、父母いずれかを親権者に定める必要があります。親権の決め方や内容について説明します。
親権者とは、文字どおり、子供の親権を持つ親のことを指します。親権は自動的に決まるわけではなく、離婚の話し合い(協議)、調停、裁判などで決めることになります。調停も実質的には当事者間の協議で条件面を定めますので、父母双方が親権を譲らない場合、最終的には裁判で決定します。財産分与などは極端にいえば全く決めなくとも離婚することができますが、親権者については父母いずれかに定めない限り離婚することができません。
親権は以下の2つの権利から構成されています。
身上監護権は、子供の面倒を実際にみる権利です。一緒に暮らして衣食住の世話をする権利です。一般的に、親権と言えば身上監護権をイメージされることも多いでしょう。
財産管理権は子供が得た財産などを親が代わりに管理したり、法的な行為の代理人になる権利です。子供が何らかの契約をする場合に代理人となる権利です。余談ですが、弁護士が未成年の方からご依頼を受ける場合には親権者の方から署名押印を頂く必要があります。
これらの権利は権利というより義務という言い方が適切にも思えますが、親権は子のための権利と考えるとこのような内容になるのも自然に思えます。
親権者をどうするか当事者間の協議で定まらない場合、どのように決めるかは数値化できるものではありませんが、裁判所の考慮要素として以下の要素があります。調停では強制力こそありませんが調停委員もこれらの要素から当事者の説得をしますし、訴訟で判決を出すときにもこれらの要素を検討します。
養育実績: 長い時間子供と接してきた親が重視されます。女性の社会進出が進んでいると言いつつも、日本の夫婦では母が育児休暇を取得し、その後も時短勤務などを利用して母親が中心となって子の面倒を見ていることが多いため、ここで母親が親権者という結論になることが多いのが実情です。
お子様の意思: 訴訟に移行した場合、お子様が15歳以上の場合は必ず意見を聞かなければならないと法律上定められています。実際には10歳前後になるとお子様の意向を考慮する傾向にあります。この年齢のお子様の意向を無視して親権者を決めたとしても余り良いことはないと考えられています。
主な要素はこの2点ですが、実際に親権を争う場合には以下の点も主張することになります。決め手にはなりにくいですが、補助的な考慮要素とされています。
離婚後の養育環境: お子様がどのような環境で過ごすかも考慮されます。ここでいう養育環境は経済面ではなく、お子様の監護を手伝ってくれる方がいるか、同居する場所の間取りなどが考慮されます。
離婚後の養育能力: 肉体的・精神的健康が求められますが、よほどの重病でない限り問題になることはないでしょう。少なくとも普通に仕事をしていて何か薬を飲んでいますという程度では結論に影響することはりません。
親権は突き詰めて考えると離婚問題が顕在化した時点で新しくできることはあまりないことも少なくありません。しかし、争った場合に親権者になる見込みがあるにも関わらず、親権を手放さない限り離婚しないと言われてしまい、親権を諦めようとしている方の相談を受けたこともあります。そのような場合には、調停や訴訟に移行することで親権を獲得できる場合もあります。まずはご相談ください。